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キラキラ

第38章 バースト11


『どこに跳ぶか見当もつかないから、リスクが高くて……』

「そうか……」


そうだな、と思う。
いきなり人混みに瞬間移動したら、周りの人間は度肝をぬかれるだろうし、変に顔を知られても、この先何があるかわからない。

SNS全盛期のこの時代、一回、超能力だとか言って、拡散されたらもう終わりだ。

……でも、もうこれしか方法がない気がしてきた俺は、引き下がるつもりはなかった。


「すまないが、一回でいい。やってくれないか」


俺の口調に何かを察したのだろう。

潤は、ちょっと待って、といって通話を切った。

五秒後、


俺の目の前に、潤が現れた。

ラフなスエット上下の部屋着そのままに。
本でも読んでいたのか、眼鏡をかけたままで。
チカラを使ってテレポートしてきた。


「……能力使うのは全然いいけど。……どうしたの?」

「…………」


心配そうなその顔に、俺は思わず手を伸ばし、潤のその細い体を抱き込んだ。
いい匂いのするうなじに顔をうずめ、力をこめて抱きしめる。


……落ち着く


焦っている気持ちが、凪いでゆく。


「……翔?」

「……ちょっとだけ」


俺は潤の温かい体を抱きしめる手にもう一度力をこめた。
潤は、戸惑うように、俺の背中に手をまわし、静かに擦った。

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