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キラキラ

第39章 バースト12


うなだれるカホの後頭部を見下ろして、俺はいらだちを抑え込む。

もともとは、駅に向かう俺の足の速さに追いつこうとしていたわけで。

1ミクロンの後ろめたさに、俺は、


「聞きたかったことって、なんなんですか」


タクシーをつかまえるまえにたずねてやった。
俺に聞きたいことがある、とカホは確かにそう言った。
ところが、彼女は、ふふっと笑って、肩をすくめた。


「……翔くんと帰りたかっただけです」

「…………あ、そう…」


聞いた俺が馬鹿だった。


俺は、黙って車道を振り返る。
すると、今度は、「あのっ…やっぱりひとついいですか」と、カホが大きな声で俺をひきとめた。


「……なに」


俺がしぶしぶ頷くと、


「翔くんの恋人と、私と、どっちが綺麗ですか」

「……は?」


思わず振り返った。
カホは真剣そのものの顔で、オレを見上げる。



「私は、その人に比べてどこが劣ってますか」


…………てめぇはアホか


言いたいのをギリギリこらえて、吐き捨てる。


「………そんなこと聞きたいんですか」


比べること自体無駄だ。
俺はあきれて、今度こそ踵を返しかけて…


「だって、私が男になんて負けるわけないもの」


カホの一言に体がとまった。

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