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キラキラ

第39章 バースト12


休日とあり、水族館は賑わっていた。

家族連れや、仲睦まじいカップルに混じり、カホと水槽を1つ1つ眺め、歩いてゆく。

川の魚。海の魚。
熱帯魚。

暗い館内に浮き上がる海の青は、どうしてこんなに気持ちが静まるのだろう。
エイやサメなど、ゆったりと泳ぐ大きな魚たちは、見ていて優しい気持ちにすらなる。

一度、潤と行ったことがあるが、あいつも同じことを言っていたな………。

ぼんやり記憶をたどる。

嬉しそうに、エイを目で追っていた潤が脳裏に焼きついてる。
あの大きな瞳がワクワクするように輝いていたのが、印象的だった。


やがて、筒状の水槽のなかを浮遊する白やピンクの海月の前に来た。


海月ー可愛いーとはしゃぐカホを視界からおいだし、目の前のフワフワしてる奴らをじっと見つめた。


……………『海月ってさ、見てて飽きないよね』と言って、長いこと同じ場所から動こうとしなかった潤。

海月なんかより、おまえの顔見てる方がよっぽど飽きねぇわ、と言って、あいつに呆れられたっけ。


「翔くん、ペンギン見に行きましょ」

「ああ………はい」


カホの声に、現実に引き戻された。
彼女は不思議そうに俺を見上げ、首を傾げた。


「海月、好きなんですか?」

「え?」

「すごく優しい目をしてました」

「ああ………まぁ、ね」


どこにいても何をしても、心にあるのは潤。

ならば、俺は、今、何をしてるんだろう………?

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