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キラキラ

第39章 バースト12


コーヒーの蓋はきちんとしていたようだが、カホが驚いた拍子に紙コップに変な力を加えてしまい、結果、その蓋が緩んだみたいだ。

幸か不幸か、床にぶちまかれるはずだったコーヒーの大半は、カホの服が吸い込んでいた。


嘘だろ……


漫画のような運の悪さに、嘆息する。
あーあ…びちょ濡れ、と呟くカホを立たせ、ちょうど近くを通った清掃の女性の方に床の掃除をお願いして、俺はカホを1番近くの御手洗に押し込んだ。


「その手冷やしてきてください」

「あ、大丈夫ですから…」


赤い指を隠そうとするカホに、俺は再びため息をついて、顎で中に入るように促した。


「いいから。しばらく水道の水に当てとくんだ」

「………はい」



カホはしゅんとして、中に消える。


俺は、腕時計に目をおとし、この後のことを考える。



……帰るか



彼女のあんな姿では、このまま館内をウロウロできやしない。

帰りにどこか適当な店で、着替えを買って、着替えさせるしかないだろう。

水族館を見学したら、お役御免で、とっとと帰るはずだったのに。


面倒なことになったな…



『翔さん………どこ?』


そこへ、かずの声が頭に響いた。

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