
キラキラ
第24章 バースト5
「翔は、元気にしてんのか」
モンブランの上に乗ってる栗を大事そうに口に運びながら、昌宏さんが尋ねる。
俺たちが、親と離れて兄弟二人暮らしをしているのを知ってる昌宏さんは、こうやって翔のことも気にかけ、時々様子を尋ねてくれる。
嬉しいことだ。
昌宏さんがいれてくれた香りのいいコーヒーを嗅ぎながら俺は、うん、とうなずいた。
「うん。もうすぐ受験だから、毎日勉強してる」
「そうか。……どこの大学受けんだ?」
都内の有名私立大学の名を告げると、昌宏さんは、へぇ……と目を丸くした。
「やっぱあいつ賢いんだな」
「ほーんと。俺の弟とは思えない」
フフっと笑って、パクりとチョコを口にいれる。
濃厚なビターの風味が、たまらない。
その美味しさにうっとりしてると、昌宏さんが優しい瞳で、俺を見てるのに気づいた。
「……うまいか」
「……うん」
微笑んだら、昌宏さんが体をこちらにぐっと寄せてきた。
ドキリとしてると、昌宏さんの長い指が俺の顎を上向け、彼は大きな目を細めて悪戯っぽく笑った。
「……味見」
そうしてゆっくり顔が傾けられる。
キスされる……
高鳴る胸をおさえて、俺は、誘われるように静かに目を閉じた。
熱い唇が、おれのそれにそっと押し当てられて、二、三度柔らかく食まれたと思ったら、するっと舌を差し込まれた。
「……」
持ってた小さなフォークが、手から滑り落ち、皿にあたってカランと乾いた音をたてた。
同時に昌宏さんの手が俺の後頭部にまわり、キスが深くなる。
「んっ……」
ケーキの味のする甘い甘いキスを交わし、存分に口内を舐められると、だんだん息があがってくる。
昌宏さんの腕が、俺の肩を抱き寄せ、顎を上向かされると、もう身動きがとれない。
「……んっ……はぁ……ん」
「智……」
最初はどうしても緊張して強ばってしまう体を、優しく溶かすように、何度も繰り返されるキス。
広くたくましい背中にまわしてた手で、ぎゅっと昌宏さんのニットをつかみ、必死に応えてると、静かにソファに寝かされた。
襟をおしひろげられ、首筋にキスがおりてきた。
温かく柔らかな舌が、首のラインを確かめるかのように、何度も行き来する。
「あっ……」
ぞわぞわと這い上がってくる快感の始まりに、俺は小さく声をあげた。
