テキストサイズ

キラキラ

第24章 バースト5


かずのもとに跳ぶ……。

ベッドに座りなおして大きく深呼吸した。
意識を集中して、かずの顔を思い描く。

かずは、繊細な部分と、図太い部分を上手にバランスよく持ち合わせてる男だ。
最初は、色も白くて華奢で、なんて儚い印象をもつ人なんだ、とおもっていたけれど。

よくよく話をすれば、イタズラ大好きで、わりとめんどくさがりな別の顔がある人で。

それでいて、自分には無頓着。

そんなギャップのあるところにも、雅紀は惹かれたんだろうな、と思う。

まあ、俺にはドSな家庭教師でしかないけどなぁ……。

白くなる視界に、そんなかずの気配を重ね合わせ、……くっと息を飲んだ瞬間。


瞬きとともに視界がふわっと広がった。


……。

……。


「……潤くん」


間近できこえる密やかな声。
テレパスできこえる声より、クリアな声。


ふるっと首を振った俺は、かずの部屋にいた。

正確にはかずのベッドに座っていた。

良かった。移動成功だ。

「……かず」

「いらっしゃい。相変わらず惚れ惚れするチカラだね」

ひそひそ喋りながら、にっこりするかずは、既に風呂に入ったのか、シトラスの香りのするシャンプーの匂いを、纏わせていた。

「……翔は?」

俺が尋ねると、かずは、しーっと指を口の前にあてて、

『もう部屋で勉強中』

テレパスで答えてきた。

そうだな。
こんなことしてるの、翔にあんまりばれたくないしね。
声が聞こえてもまずいだろう。

俺も頭で、かずに語りかけた。

『じゃ、俺の腕につかまって』

促すと、かずはこっくり頷き、白い丸い手で、ぎゅっと俺のトレーナーをつかんだ。

それを確認して、じゃあ……と、意識を集中しかけて、ふと気づき、もう一度ちょっと真剣な顔をしたかずを見下ろした。
かずは、きょとん、と見上げてくる。

『……なあ。』

『ん?』

『智さん……今、ほんとに恋人といるの?』

『おそらく』

『おそらくって……』

予想かよ。
笑うしかない。

まあ、一瞬のことだ。
パッと行って、パッと帰ればいい。
恋人といなければいないで、それでもかまわないしな。

俺は、ふう…と深く深呼吸した。

ふにゃりと笑う智さんの笑顔を思い描く。

俺たちの前では、男らしい智さん。
恋人の前では、どんな風に笑うの?

白く染まりゆく世界に。
俺は、くっと息を飲んだ。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ