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キラキラ

第24章 バースト5


「……危ないことしてなきゃいいけどな」

智兄は、眉をしかめて呟き、潤の頬を包み込むように手のひらで触れた。

その指先から温かな智兄のチカラが、さらさらと潤に注ぎ込まれるのを見た。
ふわりと、智兄の髪が揺れる。

「……」

智兄が何かに気づいたような顔をした。

……?

そのまま、黙ってじっと見守っていると、気のせいか、潤の表情が少しだけ穏やかになって……。
なにも感じられなかった潤が、ほんのちょっと柔らかな空気を纏ったことに、俺も気づいた。

あれ……。

それを確認して、智兄は軽く頷き、立ち上がった。

「……時々潤の手を握ってやって、お前のチカラも流してみ。目覚める起爆剤になるかも」

ただしお前がバテない程度にだぞ?と念をおして、かずの様子を見てくる、と部屋を出ていった智兄は、恋人のもとから帰ってきた男ではなく。

もうすっかり兄貴の顔をしていた。

ごめんね、智兄。
余韻にも浸れないね……。

でも、やっぱり心強いよ。

ありがとう、と扉の向こうの智兄に呟いて、俺は、固く目を閉じてる潤のそばにそっと座り込んだ。

投げ出された力のない手を握り、指を絡める。

冷たい手。

微かでも息をしてるから、生きてるってわかるけど、この顔色とこの冷たさは、まるで仮死状態だ。
怖くなる。

かずみたいに、高熱にうなされる方がまだましだ。

だからくだらないことを思って不安になってしまうのだろう。

このままずっと目覚めなかったら、どうしようって……。


握り返してこない潤の指を、俺の口元に持っていき、その指先にそっとキスをした。

早く、目を開けて。

祈りながらその指を俺の頬にあてる。

そして、いつも潤のチカラをコントロールするときのように、静かに自分のチカラを注いだ。

何をしてたか。
なんでこうなったか。
そんなことは今は知ったこっちゃない。

今は、お前が起きてくれることだけを、願ってるから。

だから、早く、その大きな瞳を見せて。
可愛い笑顔を見せて。


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