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キラキラ

第24章 バースト5

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翔の本命校の受験当日は、朝から冷え込み、チラチラ雪も舞い降りていた。

珍しく早起きした俺は、朝一で、翔とのラインに、頑張ってね、と送った。

「……」

ベッドの上に胡座をかき、スマホの黒い画面を見つめる。

今頃、智さんと温かい朝食を食べ、出発の準備をしているだろう。

最後の追い込みを邪魔したくなくて、今日という日まで、あれから会うのは控え、連絡もなるべく我慢した。
俺の気遣いをくんでくれた翔は、同じように連絡も最低限にして。

……寂しくなかったと言えば嘘になる。

顔がみたい。
声が聞きたい、と。何度スマホを見たことか。

でも…そんなとき、翔が俺を好きだって言ってくれた事を思い出して、その寂しさをのりきった。

自信のなかったあの時の俺に、それは本当に心に染み渡る言葉だったから、何度だって頑張れると思った。


それに、今、一番頑張っているのは、翔なんだから、我が儘なんか言えないし…。

「……っ」

突如、手の中のスマホが、ブルッと鳴り出し、慌てて画面を見れば、今、思い描いていた人の名前が表示されている。

ドキリとしながら、スワイプする。

「も……もしもし」

『俺』

「……うん」

『……元気か』

「……うん」

声を聞くのは何日ぶりだろう。

やばい。
嬉しくて、涙がでそうだ。


「……あの、試験頑張ってきてね」

『おう』

「……緊張してる?」

『してたけど、お前の声聞いたら落ち着いた』

「ふふ……そっか」

柔らかな翔の声。
久しぶりで嬉しくて。
なんだか本当に泣けてきそうで、俺はぐっと奥歯を噛んで胡座を組み直した。

『なあ。お前今日暇?』

静かに問われて、一瞬口ごもってしまった。

今日……?

「……?……うん」

『終わったら、お前んち行っていい?』

「……え」

『顔がみたい』

「……うん」

俺も会いたい。
すごく、会いたい。

「待ってるね」

ようやく顔が見れるんだ。
どーしよ。嬉しくて、たまんない。

一人にやけていると。


『……潤』

「ん?」

『……好きだよ』

爆弾を落とされた。

「っ………!」

『跳ぶなよ』

面白そうに言われ、ぶちっと電話が切れた。

「………!!」

しょ……翔の馬鹿っ!

ベッドの上で、俺は荒れ狂い出したチカラを沈めるのに苦労したのだった。

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