
キラキラ
第30章 hungry 2
ミニライブが無事に終わった。
俺らは年配のお客さんからたくさんほめられ、若いお姉さんたちからは、たくさん握手を求められ、皆さんが一通り落ち着くまで、まるで芸能人のような扱いをうけた。
店内が静かになった頃には、結構な時間になっていて。
……ついでに夕飯食べていきなさいよ、とヨシノさんがすすめてくれたので、ありがたく作っていただいたプレートを、大野さんと食べていたら、
「今日は二人ともありがとうな」
帰り支度を終えた坂本先生が、俺らのもとにきた。
「すごく楽しかったです。ご一緒できて光栄でした」
大野さんがキラキラした瞳で差し出された坂本先生の手を握り返している。
俺は、苦笑いして、先生を、じーっと見据えた。
「ん?なんだ、櫻井」
「……いいえ」
無理やり、ステージにあがらされたものの、大野さんとの時間を共有できて、なおかつあんな素晴らしい歌声を聞くことができた。
ま、結果オーライってやつだな。
「また頼むわな」
「もう嫌です」
だからって、二度目はねーから!
即答したら、先生は大きな口を開けて笑った。
その隣で、控えめに佇んでいた長野さんも、クスクス笑う。
ピアノを担当する長野さんは、話には聞いていたけど、今回初めて出会う。
先生とタイプが違い、柔らかな物腰が印象的で、微笑んだ顔は、とても優しい。
活動的な先生と並ぶと、まさしく静と動だ。
「……二人とも今日は助かったよ。ありがとう。ピアノも歌も、心がこもっててすごく良かったよ」
俺、到着したけど、出にくかったもん……と、長野さんはぼやいた。
「……でも。お客さんが怒って帰っちゃったらどうしようって思ってました」
ね、と同意を求めてくる大野さんに、うんうんと頷く。
「お二人は、こちらで活動して長いんですか?」
「3年くらい……かな。このカフェで、ライブできるらしいっていうのを、クチコミできいて。俺らも今度出演させてって、ヨシノさんにその場で交渉したのが最初だよ」
「へぇ……」
すると、大野さんがニコニコして補足した。
「ヨシノちゃん、気に入った人しか出演させないんですよ。きっと一目見てお二人を気に入ったんでしょうね」
俺は、その言葉に妙に納得していた。
……なるほど。
二人ともイケメンだからだな。
