
キラキラ
第30章 hungry 2
「お前ら、この寒いのによくやるなぁー」
井ノ原先輩が、満面の笑みで大きな声をあげてる。
それに応えるように俺も笑みをうかべるが…滑るような反応しかできない。
……雅紀が何か、井ノ原先輩に言い返してるけど、聞こえない。
俺は、井ノ原先輩と岡田先輩の後ろに佇んでる大野さんから目を離せないでいた。
あんなに会ったらどうしよう、なんて思っていたのに、会ったら会ったで、嬉しい自分がいる。
現金なものだ。
久しぶり、というように俺を見てニコリと笑う大野さんに、自然と心拍数があがり頬がかあっと熱くなる。
こんな分かりやすい反応なんてしてしまったら、周りにバレてしまうじゃないか……。
思わずうつむいた。
……でも、ふと思うのだ。
……大野さんはいたってフラットで。
俺を少しも意識しているような素振りはない。
意識しまくってる俺はなんだろう。
分かってるつもりだったけど、やっぱりこれ、一人相撲ってやつだよな…?
好きになればなるほど、辛くなるってなんなんだ。
想いがでかくなりすぎて………。
大野さんにこの想いは届かなくてもいい、なんて綺麗事を思っていたのに。
それが納得できなくなってる自分に驚いた。
「おつかれっしたー!」
大きな挨拶に、はっと意識をもどせば、全員そろって頭を下げてて、俺もあわてて礼をした。
井ノ原先輩は軽く片手をあげて、岡田先輩は、ふっと笑って。
大野先輩は、柔らかな笑みを残して。
三人歩いて行く。
その後ろ姿を見送り、俺らは再びランニング再開した。
……だけど、俺は、このなんともいえないモヤモヤに苛まれて、集中でききれないでいた。
そしてそれは練習にも顕著に表れる。
スタメン対、1、2年選抜チームの紅白戦。
集中できてない俺はボロボロだった。
シュートが入らない。
二宮からのパスが通らない。
雅紀と息があわない。
イライラして、徐々にヒートアップしていく俺と、必死で立て直そうとしている雅紀。
でも、一人が狂うと、全員の歯車がかみあわなくなり。
……結果、俺らスタメンチームは、どの試合も面白いように負けた。
