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キラキラ

第30章 hungry 2


「……おまえら、ガン首揃えてなにやってんだ。明日もこんな動きしてたら、メンバーの入れ替え考えるからな?よく考えろ」


スタメンチームをズラリと立たせ、顧問である松岡の叱責を、俺らは黙って聞いていた。
全員を見渡していた松岡の鋭い大きな目が、最後にスッと俺を捉えた。

まるで、分かってんだろうな、と言われているかのようだ。
名指しされないだけましか。

俺はうつむき、唇をかんだ。


……分かってる。
一番の原因は俺にある。
集中力をかいたプレーは、チーム全体のリズムを崩した。


自分で自分が許せなかった。
苛立ちで、苦しい。
部活にまで支障をきたすほど、俺は不安定なのか。





重苦しい雰囲気のなか、練習を終えた。


「翔ちゃん……ちょっと」


雅紀に顎で体育館の隅に促された。


硬い顔。
めったにしない、雅紀のこの表情は、本気で怒ってる。


……まいったな……



後輩たちの心配そうな視線をグサグサ浴びながら、会話の聞こえない位置まで二人で移動した。

片付けを始めた後輩らに背を向け、雅紀は低く言った。



「……どうしたの」

「…………どうしたのって……みたまんまだけど」


どう答えたらいいのか分からずに、俺は、はんと笑って、返すことしかできなかった。
すると、雅紀はその顔を曇らせて、ふざけんなよ、と言った。


「集中力かきすぎだった。何か……悩み事でもあるのかよ?」

「……いや」

「体調悪いとか?」

「……ちがう」

「……じゃあ!もっと真剣にやれよ!」



怒鳴った雅紀に、黙って顔をあげて視線をあわせた。
いつも柔和な光を宿しているその黒目がちの瞳が、ギラギラと怒りに光ってる。



「………やってるよ…」

「やってねぇから言ってんだろ!」

「……」



ここまで声を荒げる雅紀を見るのは、出会って初めてだった。
周りとの調和を大事にする雅紀は、怒ることはめったになくて、どちらかといえば自分の想いを抑えるタイプだった。
そのぶん怒るのは、隣にいる俺の役目だったのに。


歩く音すら、遠慮がちになっている静かな体育館。
後輩たちは黙って、掃除を始めたようだ。

雅紀は、会話が聞こえないように、声をまた少しおとした。


「スタメンとれなくて泣いてたやつもいるんだよ……そんなこと翔ちゃんなら分かるでしょ?」

「……」

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