
キラキラ
第30章 hungry 2
「今は……試合前のひとつひとつの練習が大切なんだ。そんな態度とってほしくない」
真剣にバスケに向き合ってるからこそ。
部員の心をわかっているからこそ。
そして……俺のためを思って、雅紀は怒ってる。
「……ごめん」
自然と口をついてでた言葉に、雅紀は、ようやく表情を和らげた。
「……とにかく。今日は、翔ちゃんらしくなかったよ」
「……ちょっと……考えごとをしてた。明日から気をつける」
「こんなこといってあげれるの俺だけなんだからね」
「……うん」
はあ、とため息をついて少しだけ笑った雅紀に、俺は小さくうなずいた。
雅紀が続ける。
「……本当はさ、試合中だろうが、おたがい意見を言える関係が一番いいんだけど。翔ちゃん怖すぎるから、二宮も迫力負けして、話しかけられないし」
「怖すぎって……別に俺は……」
「怖かったよ」
断言する雅紀に、俺は口をつぐむ。
まあ……確かにイライラして、雑なプレーだったことは認めよう。
ふと、いつだったかの練習中に、揉めてた二宮と森田を思い出した。
そうだな……二宮も本来ならば周りの空気を読んで、思いを言葉にできるやつだから。
俺が少しでも心に余裕があったなら、何か聞けたかもしれない。
「多分……さっきの試合中だって、二宮や他のみんなはきっと翔ちゃんに言いたいことは山ほどあったと思うんだ」
「言ってくれれば……」
「だから。言えないの」
「……んじゃ、言わせてみるよ」
「え?」
「ミーティングと称して、二宮を残して言わせてやる」
「……今から?無理じゃない?」
「るせぇな。おまえ絶対口出しすんなよ?」
なおも不安そうな顔で何か言おうとする雅紀の話を一蹴する。
振り返れば、体育館には誰もいない。
しんとした空間が、先程まで熱気に満ちた練習をしていたとは思えないほどの、深い寒さを伴いはじめていた。
大丈夫かな……と呟き、くしゃん、とくしゃみをする雅紀に、
「……ありがとな」
ポンと肩をたたいたら、鼻をすすった彼は、貸しだよ、と笑った。
