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キラキラ

第30章 hungry 2


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寝心地の決してよくない薄いベッドで、俺はゴロリと寝返りをうった。

空調の音と、この部屋の主がたてる小さな物音しか聞こえないなか、俺は何度目かのため息をついた。


胸が苦しい。

こんなことは初めてだ。

ついこないだまでできていたのに、自分の気持ちのコントロールがきかない。

おさえよう、おさえよう、と思うのに、その意思に反して、あふれでてきている……恋心。


そして、さらに先日の出来事が拍車をかけた。


笑えるよな。
……雅紀たちにあてられるなんて。


昨日の二宮とのミーティングでのことだ。
知らず強い口調になってしまった俺は、二宮を泣かせてしまい。


泣くほど怖がられてんのか、俺は?と、内心大慌てした。


……だけど、雅紀のフォローのおかげで、最後には、二宮は俺に言いたいこと全部言えることができて満足そうだった。

同じコートで試合をするなら先輩も後輩も関係ないのだから、こういうのが理想なんだ、と雅紀も目を細めてた。


その二宮の言葉は、昨日の不甲斐なかった俺のプレーに対し、あまりに的確な指摘で、若干ショックではあったが、素直に受け入れることもできた。


だが……なによりも。


雅紀と二宮の間の、親密な空気がなんともいえなかった。


つきあってはないのだろう。


恋愛禁止だし。

そもそも男だし。



でも、二人だけの信頼関係ができあがってる感じがしたのだ。
それは、雅紀と俺がつくる関係とは、まったくちがう匂いのするもので。


見てて、はっきりいってうらやましかった。


俺も大野さんと、もっと距離をつめたいな、なんて……思ってしまうくらい。



目の前にある自分の指をみつめる。
長い指だな、と大野さんが褒めてくれた指。
小さくバラバラ鍵盤をたたくように動かせば、シーツの上でポスポス間抜けな音がした。

はぁ……と、またため息をついたら、


「……おまえ、何回ため息ついてんの」


含み笑いながら、養護教諭の松潤が、シャッとカーテンをあけた。

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