
キラキラ
第30章 hungry 2
「らしくねぇな。どうした?」
ん?という顔で、松潤がベッドに近寄ってくる。
俺は、むすっとした顔を見られたくなくて、なんでもねぇよ、とくるりと逆方向に寝返りをうった。
あきれたような松潤の声が追いかける。
「……なんでもねぇなら、さっさと授業もどれよ。サボり魔」
「……頭痛い」
「バカいえ。平熱だろーが」
「……胸が痛い」
「おお……そりゃ重症だな」
くすくす混ぜっかえして、ベッドに座った気配がしたから。
俺は松潤の顔をみないまま、一度聞いてみたかったことを、口にした。
「なぁ……松潤は、失恋したことある?」
「…………ねぇな。フッたことは山ほどあるが」
「……あっそ。じゃあ、いい」
はい、終了。
聞いた俺がバカだった。
そこで話を切ろうと思ったが、松潤が思いのほか真面目に聞いてきた。
「……なんだよ。おまえ失恋したってのか?」
「……」
答えようか迷った。
でもなんとなく話をしたくなった俺は、ぼそぼそと現状を伝える。
「…………まだ、そこまでいってない」
「……どういう意味だ?」
「……そもそもコクってねーもん」
「は?んじゃ、まだフラれるかなんて分からねぇじゃん」
あきれたような声に、なんだか無性に腹が立った。
だって……
「……見込みゼロだもん」
「相手はフリーか」
「…………多分」
「年は」
「ひとつ上」
「………なんだ、大野か」
「…………っ!!」
思わず振り返ったら、松潤が、にやりと笑って俺を見ていた。
「俺の目をなめんなよ。すぐわかるわ」
かああっと顔が真っ赤になっていくのがわかった。
なんで……??!
「いつだったか、大野が手を切ってここに来たことあったろ。あんときのお前の態度で、な」
なっ……て!!
いたたまれなくなり、布団で思わず顔を隠したら、松潤がくすくす笑ってポンポンと優しく体を叩いてきた。
「優等生のおまえも可愛いとこあんだな」
「うっ……うるせぇよっ」
「……ま、始まってもないなら、とりあえず仕掛けてみろ。失恋したら慰めてやるからよ」
そうじゃなきゃ、何もかわらねぇぞ?……と、優しい口調で言い聞かされて。
