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キラキラ

第30章 hungry 2


……分かってねぇな。
そもそも、性別の壁が……って、あれ。こいつそこはつっこまねーの……?


不思議に感じて、そろそろと布団から顔を出したら、今まで見たことのないような優しい顔をした松潤と目が合った。


「……俺は、性別の偏見はないぞ?」


俺が考えてることを読んだかのように、松潤がいう。


「男子校に長く勤めているとな、そういう話は意外とよく聞くもんだ」

「………それってさ……ハッピーエンドになってんの?」



おそるおそる聞く。
すると、松潤は大真面目に頷いた。



「なる場合もある」

「マジかよ」



思わず食いついたら、松潤は、またニヤリと不敵な顔をした。



「そして、それらは、お前のような真面目なやつほど、何故か成功率が高い」

「…………」

「まあ、どっちでもいーが。大野の卒業までに、決着つけてみろよ。あいつが大学行ってしまったら、女の影にも怯えなきゃならんぞ」

「…………」

「……まあ、当たって砕けたら、再生するまで、ここで寝てりゃいいさ」


ベッドくらい貸してやる、と、笑って松潤は立ちあがり、腕時計に視線を落とした。


「三時限目が終わったら、教室に帰れよ」


言い残して、カーテンを元通りに閉め、松潤は仕事に戻っていった。

俺は、布団のなかで頭を抱えた。


……なんだか。マジで頭が痛くなってきた気がする。
ぐるぐると、松潤に言われたことを反芻した。


想いを伝えろ、と……?
大野さんが卒業するまでに。


「…………無理だ……」


呟いたら、カーテンの向こうから、


「悩め悩め、青少年」


と、のんきな声が。
思わず、


「うるせー!」


と、叫び、再び布団に潜り込んだ。


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