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sugar-holic2

第16章 酒の力を借りなくても

「半年も前の一言を覚えてる位なんだから、記憶力はちゃんとしてるんでしょう?」

それは、さっき私が言った事に対しての嫌味?

それとも…

何も言わず、ただ倉田くんを見つめると、

「俺は、ちゃんと自分の気持ちをアンタに伝えてる」

真っ直ぐに見つめ返されて、胸がどくんと高鳴った。

強司に親子丼の作り方を教えた、あの夜。

『アンタが好きだ』

倉田くんから真正面にそう言われたこと、ちゃんと覚えてる。

「うん…」

「それで済ますつもりか?アンタからの返事、聞いてないんですけど」

う…そうだよね。

それに対しての返事を、ちゃんとしてないまま、ズルズルと続いてる。

それは分かってる。自覚してる。

「伝えてこないのはそっちじゃないのか?」

…そうだよ?

逃げてるって言われても否定しないよ。

だけど…

唇をきゅっと引き締めて、視線をそらすと

「ほら、そうやって黙るし」

うっ…

倉田くんからの鋭い指摘に、俯いて肩を落とした。

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