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sugar-holic2

第16章 酒の力を借りなくても

「…ったく!」

ガタンッ!!と大きな音を立てて立ち上がると

「ちょっと一服」

それだけを告げると、煙草とライターを持ってベランダへ続く窓を開けた。

そのとたん、レースのカーテンがふわりと膨らみ、ひんやりとした心地いい風が部屋に入ってくる。

「あ、この部屋、喫煙OKだよ?」

「でもアンタ、吸わないでしょう?」

振り向きもせず言って、ベランダに出ると窓を閉めた。

「本当…気遣い巧いんだから」

小さく呟いて、下唇を噛んだ。

分かってるよ。

私が臆病になりすぎてるだけ。

倉田くんの言ってる事の方が正しいんだ。

『だったら、何が不安?』

不安なのは…倉田くんがいなくなること。

今の状態がずっと続けばいいって、切望しすぎてる。

それくらい、倉田くんが大切で、必要で…

好き

なんだよね…。

息を吐き、お酒を注ごうとして瓶を持ち上げると…あ、空だ。

③は最後に取っておきたいから、残りの一本を手にとった。

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