ビタミン剤
第8章 食物連鎖
「どしたの、翔ちゃん?」
「んー大丈夫、大丈夫
なんでもないない
智くん、こんのカキフライも
めっちゃ美味そうだねぇ。」
「翔ちゃん今夜はあっちで食べよ。」
テーブルじゃなくて
リビングを指差す智くん。
滅多に無い事だけど、
たまにはゆっくりくつろいでとかって
考えてんのかな?
よく冷えてる350の缶ビールの
プルトップを外して差し出してくれる。
智くんの微笑んだ顔が完熟した
果実くらい、あまくて蕩けそうな
優しい笑顔。
「カンパーイ、翔ちゃん
今日も一日ありがとうね。」
「カンパーイ、ありがと
智くんも今日も1日おつかれさま。」
「ウフフ。美味いねぇ。」
いや、智くんに見惚れて
まだビールに口も付けてないし、
こんなかわいい顔見たら
おさまりかけた俺の息子の
反応がまた復活してきちゃってる。
「翔ちゃんどう美味しそう?」
「ん?うん智くんのカキフライ
めっちゃ美味そうだよ、
特製タルタルソースもめっちゃ楽しみ。」
「なぁんだ、おいら負けちゃったぁ。」
「……へ?」
時々会話が素っ飛んじゃうのは
智くん相手だと仕方ない事。
でも俺ら
勝ち負けなんてしてねえんだけど?
「智くんなんで負けなの?
俺なんか勝ったりしたっけ??」