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ビタミン剤

第3章 修行




浴室に響きわたる水音は、
シャワーのものではなく
離れがたいと求めあう俺たちの
唇が作り上げる淫靡な音色。


角度を変えて挑発的に舌を出して
みせるニノの細い顎と、首を
しっかりと動けないように
捕まえながらくちびるを重ねる。



「そろそろシャワーだすよ。」


「ん、ぁ、はぁ‥‥まだぁ。」




すべてがもどかしい。


息苦しさに、一度離してあげた
ニノの唇が彷徨いながら、
もう一度重なる時をとらえようと
せつなげに俺の名前を呼ぶ。



「翔ちゃ‥ん、んぁ‥翔‥ちゃん。」




一瞬でもはなれたくない。


互いの体温の上昇は半端なくて
下肢の熱を抱えたお互いの塊同士が
形状を変貌させながら、
布越しに切なさを伝えてあっていた。


右手で水のコックを一気に捻る。
ひんやりと感じるくらいが
ちょうど良いくらいの熱量を
発する俺たちは、
頭から服のままずぶ濡れ状態になる。
これで2人の抱える熱量を下げれる
とは到底いえないけれど。




「ニノ、今日の服重ね着し過ぎ。」


ジャケット、ベスト、
シャツに、アンダー
指先があまり器用とはいえない俺は
脱がしていく行為を諦めて、
腹から強引にたくし上げて
指先を滑り込ませニノのわき腹を
這い上がらせる。
きめ細かな素肌の感触を
指先で確かめながら
ニノの敏感な尖りを探り当てる。


「ぁんっ、はぁ‥‥ぁ…ひぁ…」



シャワーが床を叩きつける水音と
ニノが漏らす喘ぎは
浴室の中でとてつもなく淫蕩な
ハーモニーを奏でていた。

布越しで
擦れるだけの愛撫に焦れたように、
腰をゆらゆらと動かして自らの指で
ベルトを外して
ジッパーを下ろしていく。

シャワーの水温は確実に
俺たちの体温を奪っていく。

なのに、
2人の肌密度が直接的なものに
なると、更に体温は上昇を始める。



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