ビタミン剤
第3章 修行
ニノの言葉を鼓膜が捉える。
俺の大脳がそれを分析して、
末端神経にまで命令をくだすのは
瞬時の事。
脊髄の中の神経を伝って、
また新たな生命の源を
精巣でニノの為に作りだせと
命令を走らせる。
「フフ、お風呂遊びじゃん。
これじゃあ修行になんないね。」
「だめ?
俺にとっては中々の修行よ。
お湯の中でもニノにうんと
気持ちよくなってもらおうと
腰もしっかり動かしてるし。
浮力に負けない翔ちゃんパワー!」
「あぁ‥あっ…ぅあ、
そんなに…動かすのダメ…
翔ちゃんの…バカ。」
向か合わせで見つめあいながら
戯れ合いながら
鼻のアタマを擦り付ける甘えた
ような仕草。
二人ともシャツは脱がずにその
ままで湯船に浸かり、
ニノの左手と俺の右手を握りしめて
俺のネクタイできつく結んでいる。
お互いの利き手を封印した、
不自由な状態。
固くきつく結んで。
片時も離れたくない意志の表れ。
「じゃあさ
お湯が冷めるまでここにいよっか?
冷めたらまた修行になるし。」
「ここに…ずっと?」
「うん
ニノの中、超絶気持ちイイし。」
「バーカ。
水死体になるからヤダ。」
「俺ね、ニノから届く
愛想のない修行メール。
実は、結構楽しみなんですけど。」
「だったら、
もっと普段からマメに相手しろや。
この仕事大好き人間。
欲求不満で浮気してやるからな。」
「ええええ、それ困るなぁ。
複数プレイはまだまだ先のつもり
なんだけど。」
「うるさい、はやく抜け!
誰が…ぁん、なことするかっ。」
10センチ足らずの距離も離れて
いない二人の会話は小さな声でも
浴室に甘く拡散されていく。