ビタミン剤
第13章 ぼくのペット
自分でも分かってるけど、けっこう思い込みが強い性格で一途になりがち。
激しく生真面目な方でかなりストイックでもある。
仔犬相手にも最初の躾が大事だって考えたりする。
でも、何事もまずはじっくり相手を観察する
ことからはいったほうがいいときもあるからって
言ってくれる翔さんのアドバイスも大事にしたいんだけど。
「あ、コラ!それは噛んだりしたらダメ!
あ、ちょっとそれ、引っ張っんな。」
ダメだ…
ついやんちゃな仔犬相手に本気で必死に相手して
付いて回る自分がいたりする。
そんな俺を見兼ねてか、
翔さんがコーヒーを淹れてくれてテーブルに
座らせてくれた。
肩をトントンと優しくねぎらうようにたたいて
くれてチカラ抜きなって囁いてくれる。
「お疲れさん、潤。
ほら、飲んで少しゆっくりしなよ。カイザーは
俺が見ててやるから。」
「ん、ありがとう。」
コーヒーの香りと温もりが翔さんの気持ちと
一緒に染み込んでくるみたい。
翔さんがテレビを点けてリビングのラグの上で
寝転がると、カイザーがその周りをチョロチョロ
走り回ったりする。
好きなだけ走らせて好きなように甘噛みをさせる
翔さん。
気が付けば翔さんにくっついて、その手で撫で
られてて、コロンと腹まで見せて気持ちよく
眠りにつこうするカイザーがいてる。
「なんだこれ、マジで、ヌイグルミみたい。
潤、潤、ちょっとこっち来てみなよ
マジで、めちゃくちゃかわいいから。」
「…………」
「どした?潤。潤も、こっちにおいでよ。」
「いい、俺…寝室で昼寝する。」
俺今、すっげえ嫌なヤツになってる。
動物が好きじゃないって言ってる翔さんなのに
カイザーが懐いたり、翔さんにくっついて眠り込んだりすることに腹が立ってた。