ビタミン剤
第16章 千夜一夜物語
「なあ、雅紀、あとで砂漠行ってみねえ?」
「砂漠に?うんいいよ。」
「砂漠に夕陽がゆっくりと沈んでくのってすんげえダイナミックな光景でさ、
砂一面が真っ赤な一色に染め上げられてくんだ、俺の好きな景色の一つなんだよな。」
「へえ、俺も見てみたいな。」
「それに泣き虫雅紀が捨てた俺への好きって気持ちもちゃんと探して日本に持って帰らないとな。」
「翔ちゃんっ!」
翔ちゃんが好きな景色
一緒に見てみたいし俺も絶対に好きになると思う。
マネージャーと現地ガイドさんにお願いして
夕陽が沈んでく頃合いにジープで砂漠を目指した。
駱駝を一頭用意までしてくれてることにはちょっとびっくりだけど、
どうせなら旅の思い出作りを満喫したいもんね。
駱駝を目の前にして翔ちゃんはおっかなびっくりみたいに腰が引けてて、なんとか手綱を持って歩けるようになれたけど
俺のほうが駱駝の背中に乗ることになった。
やっぱり動物に関してなら断然場数が違うからね。
「うわぁマジかよぉ!
駱駝にビビってだっせぇとこ見られたら俺、速攻で雅紀フラれるじゃん。」
「フフ、ビビりでもへっぴり腰の翔ちゃんでも可愛いくて好きだもん。
あ、駱駝に乗るの変わろうか?」
「うるせぇ、ぜってぇー乗らねぇし!」
お馬鹿な会話をしながらゆっくりとした足並みで歩いてくれる。
沈んでく太陽が見渡す限りの砂漠をゆっくりとあざやかな夕陽色に染め上げてゆく。
マネージャーと現地ガイドさんは気を利かせて少しはなれたところで待機してくれてる。
雄大な大自然の砂漠の中、俺と翔ちゃんの2人きり
考えてもみなかったしあわせな時間。