ビタミン剤
第18章 宵待ち草
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「カンパーイ
早く帰って来るからいい子で泣かないで待っててね、かず。」
「はいはい乾杯。
現地の水と食べ過ぎには気をつけてくださいよ。
翔ちゃん旅先だと腹弱くなるから。」
「うんありがと。
かずの用意してくれた薬ちゃんと入れたもん
あ、ニノの生写真持っていかなきゃ。」
「はいはい
なんでもお好きにどーぞ。
とにかく仕事頑張って無理とか無茶はしないで無事に帰って来てくださいよ。」
「はぁーい
しっかりお仕事頑張ってニノの為に元気に
さっさと帰って来るからね!」
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完全にのぼせあがったバカップルな会話をつらつら交わしたのは先々週の事。
翔ちゃんとの別れのキスはチェリー酒な味。
あまくてほのかに酸味の効いた
鮮やかなピンク色の切ない味だった。
マグカップに注いで1人で呑んでみてもちっとも味なんてしなくて
別れ際に使ったグラスを2つ食器棚から出してきてテーブルに置きチェリー酒を注いでみる。
鮮やかな色味がガラスのグラスを彩って
なんとなく翔ちゃんと2人でいてる雰囲気
それだけでもいいかなぁなんて
テーブルのテレビを録画画像を切り替えてついでに
ゲーム用のテレビ画面も。
あと、リビングの1番大きな画面のスイッチを入れてそれぞれに録画編集してるものを再生させる。
すべての画面に翔ちゃんの姿が現れた
コンサートの翔ちゃん
ニュース番組の翔ちゃん
レギュラー番組の翔ちゃん
鮮明な画像の中の翔ちゃんはどれもみんな男前で格好良くて素敵でお茶目で笑顔が可愛くて
なのに大好きな1番格好わるい本物の翔ちゃんは俺の傍にいてくれない。