ビタミン剤
第18章 宵待ち草
「…しょ、ぅちゃ…ぁ。」
なにやってんだろ
自分の指で触ってみても翔ちゃんが生み出してくれる快感にはほど遠くて、
ぎゅっと目蓋を閉じて記憶の中の翔ちゃんをもっと
鮮明に呼び覚ますことに没頭してしまう。
あの夜
シェリー酒の味がした甘い唇はゆっくりと移動して身体のどこにキスしてくれた?
パジャマのボタンを外して素肌が露わになり
翔ちゃんの両方の指先に力を込めて摘みあげられて
啜り泣くような鼻から抜ける嬌声を漏らしいたのは
リアルな記憶の中の自分。
「はぁ…ふぅ…んぅ…」
大画面の中の翔ちゃんがコンサートでラップを披露する男前で恰好良い歌声をきかせてくれてる。
でも、今の俺が求めてるのはあの旅立って行った夜の淫らなで卑猥な言葉をいくつもいくつも情熱的に囁いてくれた翔ちゃんの声。
『かずのここぷっくりしてきてる
すっかり熟して食べ頃だね
どうしてほしいの?』
舐めてもらえない。吸い付いても、甘噛みも。
すべての甘美な刺激を施してくれるすけべな翔ちゃんはこの部屋にいない。