ビタミン剤
第20章 ウブじゃないアナタ
5人の中でも俺たち2人は1番絡みが少なくて
メンバーの中でドライな関係だって
世間では思われてる。
俺らもなるべく意識してそういう感じを演出してる部分はあるけど、
あからさまに不仲だとか揶揄されたりすると
録画してた画面を通してそれを見たときには
さすがに辛いときもあったりするんだ。
先輩からも後輩からも
引く手数多の人気者の翔くん。
自分の番組をもってるってことがおおきいし
番宣の絡みもあるから
そこは過度な演出や、リアクションなんかも
多々あったりして
仕方ないってのも分かってるんだけど、
最近その内容がだんだんと笑えないものが
増えてきたりしてる。
旅って名目の2人でお忍びラブラブデート
仲の良さを検証っていう2人きりの飲み会
抱き合ってみたり、先輩とは公開キスまで。
事務所の後輩ならまだ睨みつけたらなんとか
なるけど、
先輩はさすがに…俺らの所属する事務所は
かなり縦社会な事務所なわけで。
若い頃は目ヂカラがハンパないって
よく言われてたのは
とにかく翔くんに近づく奴等を牽制してたし
威嚇してたせいもあった。
恋愛ベタで色恋に疎い翔くんだったから
片想いだったあの頃の俺は周囲に対してかなり尖っていた。
翔くん本人は至って気にもせず、
この間食事に誘われちゃって、今度飲み会に
誘われただとか、
毎日の出来事を事細かくきちんと報告をして
きてくれる。
恋人として真っ直ぐな信頼を勝ち得てる
そうは思ってるんだけど…
自信なんてこれっぽっちも無かった。