ビタミン剤
第20章 ウブじゃないアナタ
「翔くんありがとう。
でも、飛んでくるなんて…危ないよ。」
嬉しさを隠すように、抱き寄せた翔くんの
肩口に顔をうずめた。
「そうかな?
けど、ケガしたら潤がちゃんとケアして
くれるでしょ?
きっと毎晩俺の翼を優しく丁寧に手入れして
傷ついたりしたら手当てもしてくれる。
潤の手で撫でられるのすきだもん。」
耳元で囁く声はハスキーな甘い響き。
「うん、きっとそうする。
めちゃくちゃ丁寧に洗って優しく乾かして
きれいになるまでブラッシングもするよ」
「俺ね、
潤と一緒に行きたいとこいっぱいあるんだ
潤に見せたい風景とか一緒に感じたい場所、
2人で歩きたい道、2人で体験してみたいとこも。
俺の背中に潤を乗っけて
翼を広げて世界中を潤と2人で飛んでみたい。」
「翔くん…ダメだよ、俺が乗っかってると
重くて翔くんが疲れちゃう。」
「フフ、それ毎晩俺に乗っかってきて
襲ってくる人のセリフ?」
「うっ、毎晩ってこと…ないよ
俺だって、我慢してる日とかも、あるから…」
「夜襲わなかったら、朝襲ったりするじゃん
朝から俺に乗っかってくるもんね?」
うゔそれは…ごめん
言葉に詰まってひと言だけで謝ると
俺の顔を両手でしっかりと包みながら目を見て
嬉しい愛を告白してくれる。
「毎日忙しいし、しんどい時もあったりするけど、
家に帰ってきて、
潤の顔みたらそんなのぜんぶ吹き飛んじゃう。
少しでもはやく潤のとこに飛んで行きたい
だから翼が欲しいんだ。」
嗚呼、もうこの人は
この真っ直ぐな微笑みと揺るがない愛で
俺の嫉妬心とか、焦り、不安、被害妄想とか
醜悪で荒んだ感情を一気に吹き飛ばしてくれる。