ビタミン剤
第21章 ドロップ
カラカラカラン
ドロップ缶をならしながら自販機前まで
やってきた
ぼんやりと眠たそうな顔した人が気怠そうに
前から歩いてくる
ドキドキ、ドキドキ
この胸の鼓動が聞こえないように
カランカランとドロップ缶をわざと大きく
鳴らしてみせて
おはようって挨拶した
「んあ、…はよ…」
「しっかりしてくださいよ。
大野さん、まだ眠ってんですか?」
「んにゃ、起きてる……と思う。
それ、なんだよ?」
と思うって…あなたって人は…
いいでしょうって微笑みながら
ドロップ缶をカラカラカランって振ってみせた。
「へぇ、懐かしいじゃん
おいらね、これちゃんと選んだ色のドロップが
出てくるんだぜ。」
「嘘だぁ、何色もあるんだよ?」
得意げな顔して鼻の頭を擦ってる
ホントに子どもみたいな仕草
おじさんのクセにかわいい人なんだよね