ビタミン剤
第23章 ホットミルク
………潤、……潤?
微睡みの中
聞こえてくる心地よいトーンの声
いつも間にかうとうとしてたみたいで
合鍵で部屋に入ってきてくれた翔くんが
心配そうに見つめてきてる
「…ごめん、翔くん呼びつけちゃって」
「んなこと別にいいよ、
それよりちゃんとベッドで寝ろよ、
疲れがとれないだろ?」
キーケースをポケットに仕舞い込んだ。
俺が預けてる合鍵は
ずっと以前彼女に渡したやつで半年前に
半ば強引に返して貰ったもの。
別れ話ひとつも、うまく立ち回れない
そんなみじめさが尾を引いて
生来もってる卑屈さ不器用さとが相俟って
不眠という形で身体を蝕んできてる
浅く不愉快な眠りに酒の力や薬を頼ってみても
いつからか体調管理もうまくできなくなった頃
彼がそっと近付いてきて
病院に行こうって言ってくれた。
あの日翔くんからのとつぜんの告白
あれからすぐ彼女と付き合いだした俺は
翔くんとは一定の距離感を保ったまま
仲間として
仕事だけの付き合いに徹していたのに
翔くんからもあの日以来
もう何年も、余計な事なんて
なにも言ってくることはなかった。
なのに
俺の体調の変化にいちはやく気付いて
知り合いの病院に連れて行ってくれた
それからこっそりと
心療内科を受診してるけど
付き添いはいつも彼がしてくれてた。