ビタミン剤
第25章 a mole tunnel
「どしたの、俺なんか忘れてた?」
「ちっげえよ、もっと顔近づけろ
潤が見ててキスしてる風に見えるくらいな」
ああそっかぁ…
潤のこと煽ってるんだ
わかってたのに…
自分が今さら傷付く表情になるのがわかったから
翔くんに顔を近づけて
おもいっきり笑顔を作ってみせた
ジッと見つめてくれてる
今だけでも瞳いっぱいには俺の顔が映ってる
ふっと表情が和らいで微笑んでくれる
翔くんからはあのタバコの匂いがした。
「…やっぱ気が変わった
潤を自宅まで送って行った後でうちに来い」
「………えっ?
…でも…い、いの?」
「斗真、そんな辛そうな顔で笑うな。
望み通り夜明けまで抱き続けてやるよ」
「……翔…くん…」
手渡されたタクシー代とは別に
手の平にねじ込まれる数枚のお札
今夜の飲み代に使えよって言い終わると
車を走らせて去って行った。