ビタミン剤
第33章 花浜匙(躑躅色)
からみ酒からのなみだ酒
ぽろぽろぽろぽろ泣きだす潤くんがいるから
慌ててお会計してもらってタクシー呼んで
帰ることにした。
まだぁーかえらぁないのぉ
んんーかえりぃたくないのぉ
ニノんちにいくのぉ
ニノんちれぇ呑みなおすのぉって
抱きついてきて言い続ける言葉に絆されて
運転手に俺んちの住所を告げる。
うつらうつら眠り込む潤くんの肩を揺すって
起こすと、覚束ない足取りだったけど
肩を組んでなんとか俺の部屋まで連れて来れた。
コップ一杯のミネラルウォーター
口許へ運んであげるけど
飲もうとしてコップにくちびるを寄せても
なかなか飲めずにいるから
焦ったくなって口に含んで飲ませることにした。
どうせ酔っぱらってて記憶なんて曖昧だろうし、
さっさと眠らせなきゃ
これ以上絡まれたり、くっ付いたりされても
かなわない。
あんな泣き顔見せられたりされると
こっちの理性がいつまで保てるか自信ないんだ。
「…んん〜ぁれぇ…ニノぉ…
んふふっお水おいちぃ、もっとちょぉらーい」
ねだりながら首に腕を巻きつけて
なみなみと注いだミネラルウォーターが
ほぼ無くなるまで、
何度も潤くんのやわらかなくちびる触れて
飲ませてあげた。
「んふ、フフ…ニノぉ…あんがとぉ
…へへ…しゅきぃ……」
ゆっくりと伸ばされた指先が頬から顎を撫でて
きたと思ったらぽとりと脱力した
どうやら夢の世界へと誘われたみたい。