ビタミン剤
第33章 花浜匙(躑躅色)
「潤くん、潤くん、ほら起きて」
何度揺すってもなかなか起きてくれない
切ない夢はどんどんストーリーが展開している
みたいで目に涙まで浮かべてきてる。
ああ、もうっ!!
さっきと同じことすることにした
たとえ夢の中でだって
これ以上哀しい言葉を紡がせたくないんだ。
くちびるを重ねてゆっくりとキスをすると
眠りの世界の住人だった潤くんの腕が俺の身体に
巻き付いてきた。
角度を変えて更に深いキスをしながら
耳許で潤くんの名前を呼ぶ。
ふぁ…んんふ…ぅ…ぁん…
涙を吸いとってまたキスをしてると
ようやく片目が開いた
「…ここ…どこ…?」
「潤くん、夢の中だよ…お着替えしよっ
ほら、腕あげて、脱がせるから」
微睡みから覚めやらぬ中、
手早く着替えさせて今度は布団の上に横たわらせる
気怠げだけど素直に従ってくれる姿はまるで
幼児みたいでかわいいなぁって思えた。
「…ニノぉ、なんで笑ってるのぉ」
「潤くんが素直でかわいいからだよ。
さ、ぐっすり眠ってね
今度はきっと楽しい夢が見れるから」
「ん、…あったかい…」
そりぁ今まで俺が横になってたからぬくもりが
残ったまんまだろうし。
普段もこのくらい甘えたっていいのに…