ビタミン剤
第33章 花浜匙(躑躅色)
んっんん…グスン…グスンッ
泣かせるために起こしたわけじゃないんだ。
リラックスしてぐっすりと眠らせて
あげたいだけなのに…
どんな顔して泣いてるの?
枕元に置いてたゲーム器に手を伸ばして
画面の明かりで抱きしめてる潤くんの
顔を見ようとすると
眩しさを感じて涙で濡れた目を瞑るから
「潤くん…泣かないで…
一人きりなんかにしないよ
俺はずっと潤くんのことが好き」
「…………っ?」
「夢だよ、夢の中だけど忘れないでね。
俺はずっと潤くんのことが好きだよ、
ずっと傍にいるから」
「…ニノぉ…グスン…」
ゲームの世界みたいに魔法薬とか特効薬みたいな
アイテムがあったらいいんだけど
俺が持ち合わせてるのは
潤くんのことがずっと好きだってこの気持ちだけ
涙を拭ってあげて
優しく髪を撫でて
かたちの良いくちびるから
2度と哀しい言葉が出てきませんように
そう祈りを込めて優しくくちづける。
「んんぁ…んふ、…ぁ…んっ…」