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ビタミン剤

第37章 サンクチュアリィ

Oside

「だって…俺マジでホントにムリだからね
崖とか登ったりできねぇし」


不服そうに頬を膨らませながら
言い募ってくる顔はまるでこどもみたいな
あどけない表情。
おそらく櫻井翔が見せる素の顔。

画面を通して見せる様々な造られたきれいな
表情とは違っていて、
指を伸ばせば届く距離にそれはある。



あの頃の俺は
なんでこいつを手放せたのか ?
もしあの頃の俺に逢えるならぶん殴ってやりたいっ
驕り高ぶっていた己れの傲慢さと
許容範囲の狭さ故の自信の無い臆病さ



かなり不安にさせて
ずいぶん待たせて泣かせたんだろう

だからその分うんと甘やかせてやりたい。

純度の高い黄金色した蜂蜜のように
口に含んだ途端花の蜜の芳潤な甘さが広がる
くらい蕩けるくらいほどの極上な甘さ。


「とびっきり甘いキスで起こしてやるよ」

「なにそれ、楽しみにしてるね。」


照れくさそうに見つめてくる眼差しには
情熱と潤みに混じって艶まで含ませてる風にも
見える。

匂い立つほどの芳しい色気

最近の翔からは溢れだすように感じてるのは
きっと俺だけじゃない筈。


サングラスをしてて正解だな

おそらく今の俺は相当マヌケな顔をしてるだろう。
翔を見つめてる時は、
自分でも気付かないほど鼻の下が伸びた顔を
してるとメンバーから指摘された事があった。



甘える事が苦手なこと不器用さも知ってる

寝入った翔のひざ掛けをなおしてやりながら
指先で頬をそっと撫でてやる。

あの頃の悔恨と懺悔を込めて
愛おしさと充足感を噛み締めていた。


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