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ビタミン剤

第37章 サンクチュアリィ


Oside

眠りの森のから目覚めた美女は
知らないどこかの深い森の中にいることに瞳を
見開らかせて驚いている。
外気に体温をうばわれて小さく身ぶるいする。
肩を抱いてやりながら、周囲を見廻して豊かに
表情を変える翔を見つめていた。


この無邪気で愛らしい顔が見たかったんだ。


秘密裏に計画して行動を起こしたことは
悪いとは思ったが
どうしてもここに翔を連れて来たかった。



若かった頃の一時期
自身を追い詰めて研ぎ澄ましていくと
他人と話す事、食べる事、眠る事
それらの営みさえ拒否していた時期があった


何もかもをリセットしたくなる時
よくこの家主の所に来て山籠りをさせて
もらっていた。
春夏秋冬
どの季節にいつ訪れても違う表情を見せる
雄大な深い森の風景。


アイドルのオーディションきっかけ
他人からはラッキーなシンデレラボーイだとか
揶揄されてきた。
下積み時代もないままデビューが決まり
グループの一員としてもてはやされていた時代
苦しくて、逃げ出したくてたまらなかった。


なぜ自分なんだ?
なぜ俺じゃなくちゃいけないんだ?
なんにも出来なくて
がむしゃらでやってた事さえ
足を引っ張るような真似になってたりした。

苦しくて、辛くて、逃げ出したくて
独りになりたいといつも思ってた。


そんな時期に共演した後輩が翔だった。
学業との両立を宣言してそれを真面目に
貫き通す意志の強さ

ジュニア時代のどこか部活程度だった
ふわふわしてた態度とはまるで違っていて
苦悩しながらも演技に意欲的に取り組む姿は
後輩であろうと尊敬できる姿勢だった。



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