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ビタミン剤

第37章 サンクチュアリィ



「ねえ今夜、聞かせてほしいな。
准一くんの歌声」

「俺の歌?
んんまあ、いいけど。じゃあ翔はピアノな」

「えぇー、恥ずかしいよぉ
准一くんのほうが断然上手じゃん」

「おまえの演奏で俺が歌う、やっぱこれだろ?」


俺を背負いながら力強い足取りで森の中を
歩いてくれてる。
踏みつけてる落ち葉は何層にも積もった湿気を
含んで堆肥のようなやわらかな感触。
足を取られてもおかしく無いのに力強い歩みで
進み続けてくれる。


木立ちが徐々に明るくなってきてる
そろそろ森を抜け出す頃合いかもしれない。

「あ、なんだか足音が変わってきた」

「うん、そろそろだ。森の中と違ってこの辺の
落ち葉は風に飛ばされて乾燥してる
やつだから踏みつける音も違って聞こえるな」

息も乱さずに歩き続けてくれた。
首筋の准一くんの発する汗が香水と混ざって
セクシーな男の香り鼻腔を擽ってくる。

ログハウスに到着して階段手前で下ろされるから
自分で登ろうとすると
お姫様抱っこで運ばれるから慌てて首に
抱きついた。

「ほらよ、無事帰って来れたろ。
座ってまってろ、風呂沸かしてくる」

普段メンバーやスタッフさんとかに
甘えるってことをあまりできたりする機会は
少なくて
それを知ってるのか
准一くんはどこまでも俺のことを最上級に
甘やかしてくれるんだ。

武骨でストイックな山男は
野獣みたいな慾望をぎらつかせてくれる時が
あったり
ただただべたべた甘やかしてくれる極上な
優しさで包んでくれたりもする。

要するに文句無いくらいの最高級な恋人。



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