ビタミン剤
第37章 サンクチュアリィ
Sside
ゆっくりゆっくりとした歩み
このあたたかなぬくもりに包まれながら
心地よい揺れにすべてを委ねてる。
やわらかな寝具へと身体を横たえられて
そっと撫でられてる髪
ちいさな声、あの旋律がきこえる
まだ目覚めたくない
でも優しい旋律を確かめたくて、
瞼を開けたくて
この揺れの心地よさを知りたくて
微睡みからそっとぬけだして片目を開いてみると
優しい眼差しの准一くんがいる。
「…わりぃ、起こしちまったな。」
「…ここ…どこ?」
「ベッドだよ。
おやすみ、ぐっすり眠りな。」
見下ろす准一くんの向こうに天窓から星空が見えた
切りとられた夜空には三日月の姿もあった。
手を伸ばすと抱き返してくれる腕の強さと温もりに
夢じゃないんだって理解する。
「今日は疲れたろ、ゆっくり眠りな
明日は山登りでまた鍛えてやるから」
「…准一くん…」
「俺はもうすこし下で本でも読んでおくから。
おやすみ、翔」
ぎゅっと抱きつくと
照れくさそうな笑みを浮かべて俺の身体から
離れて行こうとする。
行かないでって言葉より先に涙腺が崩壊した。
「………ぐすっ……」
「おまえ…泣くほどイヤか?山登んの?」
「違うよ、置いてかないで
俺を、1人にしないで…准一…くん…」
こぼれ落ちる涙を指で拭って
溢れそうになってる涙はやわらかな口付けで
吸い取ってくれる。
「…准一…く…准っ一…准一っじゅっ」
熱に浮かされたように名前を呼び続けると
くちびるを奪うような激しさで塞いでくれた。