ビタミン剤
第38章 愛のある風景
Nside
「ねえ、来月の休みの予定は?」
キッチンで洗い物しながら声をかける
リビングでだらしがなく寝転んでビール片手に釣り番組を見ながら時折、尻をボリボリ掻いたりなんかしてる。
歌って踊ってる時は
あんなにかっこいいのに。
それでも頬が緩んで鼻唄まで出てしまうのは
俺だけが知ってる姿だから。
あんな、気を緩ませてリラックスしてる
大野さんを見れるのはたぶんこの世で俺だけ?
「ちょっと聞こえてますぅ?」
「んあ?」
まるで熟年夫婦の会話じゃん
エプロンを外しながら
ビール片手にソファに座ると、当然って感じで
俺の膝枕でくつろぎはじめる。
チャンネルを変えてやったら、
なにすんだよぉって唇をツンと突き出して
文句を言ってきた。
「チャンネル権は、膝枕料金ですよ」
「ンもぉせっかく大物が釣れるこれからって
とこだったのに」
「俺の質問無視したでしょ」
「だっけ?
あー来月の休みね。うーんとね
伊豆のほうの海まで行くよ」
「ふーん……そうですか」