ビタミン剤
第6章 ニンニン
かわいい笑顔で嬉しい言葉を言って
くれる智くんに思わず、
涙腺が緩んでしまいそうになるのを
なんとか堪えて、お箸で差し出して
あげたのは
マグロとアボカドのサラダ。
「んーうまいっ。
アボカドけっこう好きなんだ。」
「だよね。
じゃあ、もう一口どうぞ、あーん。」
美味しそうに食べる智くんを
見つめながら
俺はこの間仕入れた真新しい
知識を小出しにしてみた。
「あのね智くん
古代の南アメリカのある地方ではね
アボカドって
生命の果実って言われてたんだよ。」
「へえ、さすが翔ちゃん
なんでも知ってるね、
やっぱりかっこいいや。」
「いやぁ、そんなぁ。」
なんて照れるフリ。
後頭部をかきながら実はもう一つの
意味はやっぱり伝えられないなぁと
言葉にせずにいた。
だって、ちょっとだけスケベな
感じになるし
まさかアボカドのカタチから語源
が睾丸だとかなんて言えないでしょ。