ビタミン剤
第39章 ノクチルカ
「俺、キスしました
俺は兄貴に…櫻井翔さんにキスしました。
好きだって言って迫って壁に押さえつけて無理やりキスしました。」
「へぇ、ずいぶん情熱的だね。
んで、どうだった?」
冷淡な口調がむしろ恐かった
潤の穏やかな眸の色が豹変するんじゃないかって
「くちびるを逸らされたから、無理やり首すじ
辿って触れてたら、
すっげえキスの痕がたくさんあったから
…驚いて…
あれって松本先輩が付けたんですか?!」
先輩の潤に対して睨み付けるような視線を向ける。
「そうだとしたら?」
「俺、兄貴が…櫻井翔さんの事がマジで好きです」
「風磨っ!!」
最後の台詞に被せるように叫んでた。
潤が殴り掛からないか激怒しないかそれだけが
心配だった。
けど、
潤の眸の色は変わらないまま
まるで風磨の吐き出す台詞を知っていたかのよう
にも思えた。
「おまえが誰を好きになるのは勝手だし
俺には無関係で一切興味もない
けど、相手が翔ってことなら別の話ね」
「潤っ!これは酔っ払っいの冗談だから…っ」
顔色ひとつ変えずに穏やかな口調で話し続ける潤
俺だけが2人の間であたふたして顔色を変えている
「それで?おまえのキスで翔は反応した?
おまえが抱きしめたとき
翔は少しでもうっとりして身を預けた?」
嘲笑うかのように口角だけをあげる笑み
それは絶対的勝利者に挑戦者が敗れた瞬間
「……………くっ…」
重苦しい沈黙
噛み締める風磨のくちびるからひとすじの血筋。
潤を睨み付けてた視線が床に落ちていく
握り締める拳がしずかに震えていた。