ビタミン剤
第40章 嵐影湖光
逢いたい
メッセージを送ると、それだけで通じる相手
即返信が来た
部屋へ来いよ
ああ、こんな事は間違ってるのに
許されない裏切り行為
けれど火照った躰は確実に心を置き去りにして
しずかに身支度を始めだす。
「…ぐっすり眠っててね…智…」
おだやかな寝顔にキスをして足音を忍ばせて
もう一度振り返ってから部屋を後にする。
智への罪悪感に後ろ髪を引かれたのは扉の中まで
廊下へ出た瞬間、
そんなものは粉々に砕け去っていく。
寝入った恋人の肉の楔を後孔からずるりと
引き抜いて脱ぎ捨てていた衣服を手早く着込んで
向かった先は
すぐ隣りの翔さんの部屋。
「よっ、早かったな」
「ん…はぁ…んんんっっ」
ひかえめに叩いたノックの音
ゆっくりと開かれる扉の速度に
もどかしさを覚え、身体をずらし無理やり滑り込ませた。
しがみつくように身体を預けると
たくましい腕がきつく俺を抱きしめてくる。
縺れ込むように倒れ込んだ絨毯の上
扉からわずか1メートルほどのところでくちびるを重ね合わせる。
舌同士が粘着質な音をたてながら夢中になって
唾液を混ぜ合わせて、妖しく蠢く爬虫類のように絡ませ続けていく。