ビタミン剤
第43章 オッカムの剃刀
「あ、さっきの楽屋でさ
置き菓子のビスケットもらってきちゃった。
ほらほら見て見て
これね、俺が超好きなヤツなんだよ?
思わずポッケに入れてきちゃったぁ」
「おーお、叩いてみ?
そしたらポッケの中で増えるからさ」
「うそぉホントに??」
言葉通り素直に上着のポケットに戻して勢いよく
バシッバシッっと叩いてみたら
俯いて肩をふるわせてる翔ちゃんがいるから
どしたのって声かけると涙目で笑ってるんだ。
「雅紀っ…やっぱおまえ可愛い過ぎだわ。
ポケットのビスケット見てみろよ」
個包装のビスケットはどれも無残に砕けてた
「えっ??ぼろぼろじゃん?
ぜんぜん増えてないけど??」
「だーかーらぁ1枚が割れただろ。
かけらが3まい?4まい?
ほーら増えてるじゃん」
「あーあなるほどね、そういう事なんだぁ 」
「ピュアな雅紀だから素直に実行できる、
そこが雅紀の最高に魅力的なところだよな」
なんかすこしバカにされて、うんと褒められちゃった気分。
だったら素直に喜んでおくほうが良いよね。
「えへへ、ありがと。
あ、山芋も焼くからねぇ呑んで待ってて」
エプロン片手にキッチンへ向かった。