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ビタミン剤

第43章 オッカムの剃刀


Nside


「あ、あの、コーヒーでも淹れるね」

「いや、いいから。相葉さん座って」

「うん、あのさ、プレゼントの髭剃り見せて貰ってもいい?」

「ああ。うんいいよ」

気まずい沈黙なんて嫌だから
とにかく話題になるなにかが必要だと思った。
相葉さんは無造作な手つきで包装紙とリボンをほどいていく。


「さっき翔ちゃんが言ってたこの商品の
呼び名だけど、誰かの名前がついてるの?」


「いや、オッカムの剃刀って言葉は製品名とは
違うみたい。
カードに書いてることは
最低限必要でない余計な存在がある、
そうしたものは不必要なものなのだから
切り落とすべきであるという考え方で
ものごとをシンプルに捉えろって思考方法の
法則なんだって。」


「ふーん、なんか翔ちゃんらしくて難解
俺には難しい言葉だなぁ。
それにしてもあの2人が付き合ってたのには
びっくりしたよね」


「うん、そうだね。
けどお似合いだし言われてみれば納得かな。
そうだ。相葉さんも最近、夢で悩んでたの?」

話しがあの2人のことに逸れそうだから、
軌道修正することにしたら
途端に顔色がくもってしまう。


「あっ、うん……」

「俺も、そう
ずっと眠るのがこわいって思ってた。
すっごく生々しい夢で、目覚めた時の感覚が
こわいくらいにリアルに研ぎ澄まされてる内容
ばかりでさ。
ずっと抱えてる現実から逃げようとしてたから
夢に出てくるようになったんじゃないかって
翔さんに言われちゃったんだ。」


伏し目がちに困ったような顔してうつむく
そんな顔が見たくて話してるんじゃない。

もっと単純に伝えなきゃいけないんだ



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