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ビタミン剤

第43章 オッカムの剃刀


きれいな黒髪を指先でそっとふれるように撫でて
いきながら
しずかにソファに押し倒すように横たわらせて
濡れた目元にそっと唇で触れた。
夢で何度もくちづけたあまくてやわらかな唇が
俺の名前を紡いでくれる。


「……ニノ…ぉ…」

「かずって名前で呼んで。
俺も雅紀って呼ぶから、雅紀好きだよ」

「…っかず…ふぇ…グスっ…だい好きっ!」



用意のいい翔さんが手渡してくれた
贈り物の紙袋には
カードと髭剃りとシェービングクリーム
それ以外にローションの瓶。

せっかくのバースデープレゼントより
実用性の高いこっちの贈り物のほうを先に使わせてもらう事になりそうだ。



過ぎてく時間をもう無駄にはしたくない。
限られた刻だから
2人で過ごせるこれからの時間を大切にしたい。


みすみすあきらめていた
後悔のカケラを拾い集めことは出来ないけど
手遅れじゃないって教えてくれた
あの2人のつくってくれてる轍を見ながら
この手を離さずに歩いていきたい



「雅紀、胸許見せて」

「あ、うん。
あ、それなんか、寝てる間に虫に刺されたのかな
搔きむしったみたい」

「フフ、痒い?」

「ううん、ちっとも。」


きっともう寝込みを襲う悪い虫は現れない


鋭い針を雅紀の身体の奥深くに突き刺したいって
思ってる優しい恋人が毎晩添い寝して守ってあげる。


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