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きみがすき

第38章 *だいすき*

*相葉*







大「…」


「……ファイティングポーズ…」


大「え?…あれっ?!……ほんとだ…なんでだろ…?」
大ちゃんは、自分の胸元に挙げられた、自分の拳を見て驚き、不思議そうな顔をし、そしてそれをやっぱり不思議そうに下へと下ろした。



俺が近づくと同時に、挙げられた2つの拳。

一瞬、殴られる?
と思ったけど、そんな様子は1ミリもなくて、ただ弱々しげに握られてた拳。

そして歪んだ、不安そうな…顔。



……

あぁ…

今のはきっと
無意識な防御反応。


それは
大ちゃんと俺の間にできてしまった隙間。


これ以上 来るな。
これ以上 近づくな。と

俺が作らしてしまった壁。


大ちゃんを

傷つけた

馬鹿な俺への拒絶。




「大ちゃん…!」

ちゃんとっ
ちゃんと説明しなきゃ!


大「…っ、…なに?」

びく。と反応した体。



今すぐ その体を
抱き締めてしまいたい。


でも、誤魔化したくない。
誤魔化すべきじゃない。ちゃんと伝えなきゃ
この隙間はなくならない。

そう思った。



「俺っ、彼女と会ってきた。」


大「ぁ…」

瞳が、揺れた。

大「……そうなんだ…そっか…。」


「ちゃんと話してきたよ。言いたいことも、聞きたいことも、全部全部やってきた。」


大「…うん。」


「それで俺…」
大「元気?だった?」

遮られる言葉。

「…ぇ」


大「…彼女。元気だった?」

その顔は……笑って…?

「ぁ…うん…前より少し痩せてたけど、元気だって…」


大「そっか。」

それはまるで、微笑むように…



……

いや…違う
その顔は……その表情は…なに?


大「会えて、ちゃんと話ができて良かったね。
…うん。良かった。」

読み取る前に、ふ。と下げられた顔。


「大ちゃ…」

大「…、っ……、」

呼吸が、揺れる。

「どうし…」

大「俺……俺、相葉ちゃんのことがすきだよ…誰にも負けないよ……」


揺れる声。
けれど、その声は はっきりと耳に入ってくる。


大「……彼女のとこなんて…行かないでよ……
俺、相葉ちゃんじゃないと…相葉ちゃん意外…いらないっ…」




ごめん


前言撤回




俺は、椅子から大ちゃんを引き下ろし

その細い華奢な体を
力いっぱい抱き締めた。






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