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きみがすき

第8章 *ナナ*

*大野*




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『つ…疲れた……。』
椅子だけじゃ俺の疲労した身体は支えられなくて、テーブルに突っ伏す。

一生分くらい皿洗ったかも。
なーんて大袈裟か。


相「大野さん。本当にありがとうございました。」
頭の上から、少し掠れた声。

テーブルに突っ伏したまま、顔だけ横向けて、声がした方を見上げる。

そこには申し訳なさそうな顔。
コト。と俺の目の前に置かれたマグカップからは、暖かそうに湯気が立ち上る。

カタン、と相葉さんが椅子に座る。
肩越しに、ピンクと黄色の熱帯魚が泳ぐのが見えた。

「俺が手伝うって言ったんだからさ。
そんな顔しないで。」
と笑って見せる。

ほっとけなかったから、わざと意地悪な言い方したんだし。


相「顔?」
一瞬きょとんとして、
「でも、本当に助かったから、
ありがとう。」
と、今度はくしゃりと笑った。


ん。やっぱり
その笑顔すき。



…あ、
「そう言えばさ、何で俺の名前知ってんの?」
俺、自己紹介してない。

身体を起こして相葉さんと目線を同じにする。

相「あ、あー、潤から聞いたの。
大野さんっていう、ニノの先輩がいるって。綺麗な人だから見れば直ぐわかるよぉって。」
と、その色素の薄い目を細めた。


「…俺、男だし。」

"綺麗" 今までにも言われたことはある。
大抵、男から言われる時には、からかってるか、女みたいって馬鹿にされる時。
良い思い出なんてない。

相「うん。そうだよねぇ
ニノと居たから、大野さんだって思ったけど、綺麗っていうより、すっごくかっこよくてびっくりしちゃったぁ。」
と、ニカッと笑った。



「…あ、それは、どうも。」

真っ直ぐ俺を見つめる瞳に、
きっと嘘やからかいはなくて、

なんだかくすぐったい…。

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