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Best name

第2章 ピュアな世界

彼女は大きな目をさらに大きくしてオレを見た
オッサンが切り出す

『…なんだ?知り合いかアイ?』
『…』

『あ…チョット』

無言のアイに代わってオレが答えた

『ちがうの?』

オッサンがもう一度
アイに確かめるように聞いた

『ハイ…まぁ』

オレの事を覚えていてくれたらしい

『なんだ、それなら言ってくれよ!
ハハハ!…で?アイどうしたって?』

オッサンがアイと仔犬を見る

『モコが…オナカの動きが悪いです』

仕事の口調に戻って答えている

『よしよし。診てくるから
こっちたのんだよアイ。ご案内もね』

『……はい』


少し力なく答える
オッサンは仔犬を連れて病院側へ移って行った

わけがわからないという様子で
気まずそうにしているアイ。

ジーパンに、少し…この前より
ピッタリしたTシャツ

長い髪は、編み込みして
キレイに2つに結ってある
また違った雰囲気だ

…この前より少し幼く見える。

『ご希望の種類とか…ありますか?』

少しぎこちなかったが仕事モードに切り替えた
と言うようにオレに話しかけてきた。

『~いや…なんとなく目に止まって
入っちまったんだ』

…キミのことが…だけど
とは言えず流す。

店の中にいる犬が一頭オレに寄ってきた
動物はキライじゃない
足元にすり寄るのをみて思わず口元がゆるんだ

『かわいいな。随分人懐っこいんだね?
よしよし』

『はい。この子…一番なつこくて優しいの
…人慣れしてるのもあるけど』


『名前は?』
『マロン』

『マロンか~。なんて犬種?』
『フレンチブルドッグ』

初めて…まともに会話ができた
まぁ…相手は仕事だからかもしれないが
どことなく
やわらかい表情でマロンをみつめているアイ

オレはやはり彼女に目が行った。

『気になる子いたら言ってください。
抱っこもできるから…』

そう言うと彼女はオレからはなれた

せまい店内には数匹の仔犬、仔猫、うさぎがいる

フロアにはさっきのマロンと
もう一頭犬がいた
看板犬てやつか

店のドアが開いてちょくちょく客がやってくる

『こんにちは。…あ、マツイのおばあちゃん
どうしました~?』

オレは犬を見つつ
彼女の様子をチラチラみていた
結構人が入るんだな

それも殆ど近所、常連で顔なじみらしき
老人や家族連ればかり
その全てを彼女が一人で対応している

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