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第3章 君の十色

『なんか趣味とか出かけるとかさ…しないの?』
『…とくに』

『友達と遊びにいったりとかさ』
『…あんま いないから』

ぎこちない会話
相変わらずの少ない言葉。

オレはその一言二言から
意味を拾うことに慣れていた
それもまたおもしろい

アイル自身は面倒とか
オレをかったるいとか
何を思っているかわからないが

〃わかりやすい子〃になってきていた。

アイルはウソをつかない。
おそらく大半の人が感じる
"ブアイソウ"というイメージは
オレには全くと言って良いほどなくなっていた。

『来週…日曜ってなんか予定ある?』
『…?』

『忙しいかな?』
『べつに』

アイルの〃べつに〃は大抵が〃yes〃だと
最近おもえてきた

〃べつに大丈夫〃

〃べつに平気〃

〃べつにイイよ〃

少し笑えてくる。


『良かったらオレに付き合ってくれないか?』
『?』

『少し出掛けたいんだ』

無言のアイルを見るのが少しこわかったが
返事はアイルが決めることだ。

『疲れたり、イヤになったら
その場で帰っても良いから。お願い』



少しくだけて言う



…やはり無理だろうか。





『べつに…』





マジか?!
これはマジかっっ?!


『…本当?ありがとっ』

言葉少なく返したが
脳内に100万発の花火があがっていた。

平静装うのが一苦労だ。


…アイルは不思議そうにオレを見上げる。


『どうして…?』

『~ぁ、~行きたい店あるんだけど
男一人じゃどうも入りづらくてさ』


少々…ありがちな…ウソをついてしまった。


『…』
『…苦手なモンある?…食べれないものとか』


『べつに…』
『…?』

少しぎこちなさを感じ
アイルをのぞきこむ。


『…肉…類。あんま得意じゃない』

『…うん。わかった』


トクイジャナイ…か。


『…私と…いても、楽しくないと思うけど』

『ハハハ!そしたら、オレが途中で帰るさ!』


少しアイルがムッとした気がした。


『冗談だよ!冗談。じゃ、よろしくな!』

店に戻ると
ソウタさんに挨拶して

アイルに待ち合わせ場所と時間を伝えて
店を後にした。

撤回されないうちに…(笑)

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