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第3章 君の十色

駅の通りをぬけて公園通りを目指す

ファッションビルの前で信号待ちをした…長い

会話がなくてもさほど気にならないし
気まずいとも思わなかった
さりげなく後方のアイルをみた

『…?』
アイルの視線は
すぐ後ろのショーウインドウの
マネキンにあるようだった

半袖の黒のミニワンピース

胸元にワンポイント
刺繍のようなものが付いている
キレイにウエストのくびれたソレは…
アイルにとても似合いそうだ

オレには何故かCGをはめるようにピタリと
それを着ているアイルが想像できた

こんなの…スゲー似合うだろうな

『ショッピングでもする?』

少しニヤニヤしながら
アイルと同じ方を向いて聞いた

『…しない』

さほど慌てた様子もなくアイルが答える
べつに、でなくスッパリ否定だった

『どうして?~…着てみたら?』

ショーケースを指してもう一度聞いてみた

『今日は…そっちの用事…』

…そんな事…気にしてたのか
と、悪気はなくとも
オレは苦し紛れに…ついてしまったウソに
…心が痛くなった

『~そか…。じゃ行くけど、オナカすいてる?』
『うん』

緑道を通って公園のボート乗り場を抜ける
少し外れにあるナナの教えてくれた
例の店についた

店に入ったオレは…
少しばかり背中に汗をかいている

………なんだよ?

このオトメ全開の店はよっっ…!?

色々と気マズイ
…色々と

アンティーク調の店内は
やたらゴテゴテとインテリアが飾られ…
うさぎにリス…
森の中みたいな雰囲気をしていた

~~ヤベー…帰りてー…(泣)

『…ここが…気になっていたの?』

珍しくアイルから口を開く

『ぁ…おぅ…まぁ…な』

赤面…顔を覆うようにして少し下を向くオレに

『……へんな人』

アイルから一発パンチが入る

あぁ…まったく相違ない
事実なら間違えなくオレは変な人であろう

ウソをついた罰かこれは
なんでもいーから店探せばよかったなー…

『ふ…』
表情はあまり崩さないがアイルが
一瞬笑ったように見えた

恥ずかしさは
どうでもよくなった

…尊い時間を…過ごしている


メイド服みたいな女の子たちが料理を運んでくる
野菜が沢山キレイにのっていて
確かにうまそうだ
アイルのオムライスには
ビーフソースがたっぷりかかっている

『肉…ヘーキなの?』

さりげに聞いてみる

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