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第3章 君の十色

『キライっていうんじゃないんだ』
『そう…』

確か…得意じゃないとは言ってたな

『イタダキマス…』
『あ…うん。いただきます』

ちょこんと手を合わせるアイルをみて
何かふと思った。
前にソウタさんと食事したときも
同じ仕草をした。

何か宗教的なもの?いや、きっと違う…
人間が犠牲にしている多くの命への
敬意をはらっている…?
肉が苦手と言うのも何だかしっくり来た。

言及はしなかったが、そんな気がした。
そういう事にして
オレもマネして手を合わせた。

やさしい子だな。

『優しいよね…』

思わず声に出した

アイルがモグモグしながら
首をかしげてオレをみる。

『いや、うまいな』
『…おいしい』

『動物…どうして好きなの?』
『…。好きに…理由はない』

結構するどい…的確なコト言うこだ
それもそうかと納得する。

殆どオレが喋るだけだが
それなりに会話をして食事を楽しむ。

本当に言いたいことや聞きたいことは
なるべくシンプルにして。

『ねぇねぇ…アイルって呼んでいい?』
『…』

『じゃあ、アイは?…嫌か?』
『…べつに』

通信アプリの連絡先を聞いてみたが
やっていないと言う
代わりにメールアドレスを教えてくれた。

…少し

…かなり、テンションの上がるオレ…。

『失礼しま~す』

他愛もなく過ごしていると
ローソクに火のついたケーキが運ばれて来た。

実はトイレに行くフリをして
頼んでおいたものだ。

サプライズもできると店の人が
言ってくれたけど、それはオレが断った。

アイルを驚かすよりは
ささやかに…したかったから。

『……?』

"何?"と言うようにアイルは黙っている。
その姿も笑えてオレから切り出す。

『それじゃアイ、お祝いしようか』
『…』

カチッとスマホのボタンを押して時計…
日にちをみているようだ。

『ぁ…』

アイルがようやく理解したようでオレをみる。
…やっぱどっかぬけてるな
こいつゼッタイ。

『お誕生日おめでとう。…ほら…火消して?』
『… ~~。』

アイルが少し恥ずかしそうに
フーッとローソクの火を消した。

オレはあまり音がしないように
控え目に拍手した

少し顔を赤らめて、うつむくアイル

白い肌がほんのり赤らんで、なんだか色っぽい。

ソウタさんの言うとおり
全く忘れてたようだ。

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