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馬と鹿の咄

第15章 バイク

【バイク】

 これは、10年ほど前の話になるかな。


 マンションを引っ越しまして、職場も変わりまして、新しい生活をスタートさせようって時でした。


 その町、けっこう、坂道が多かったんですよ。


 で、自転車買わなきゃなぁ〜なんて思ってたら、木造の建物でおじいちゃんがやってる中古バイクの店があったんすよ。


 そこに、オレンジ色した、細いスクーターがあったんよ。


 値段が3万円。


 これ、いいなぁって思いまして。


 即決で買いました。


 いろいろ親切に手続きもしてくれて、で、このバイクとの付き合いがはじまりました。


 ですが、しばらく乗ってましたら……



『ぺ、ぺ、ぺ、ぺ、ぺ、ぺ、ぺ、ぺ』


 連続した斉藤さんが出て来るんですよ。


 それも、20キロ出したら必ず『ぺ、ぺ、ぺ、ぺ、ぺ、ぺ、ぺ、ぺ』て、鳴り出す。


 どこから音するんだろ?


 でも、近所迷惑にならない程度の音だったから、いいかなと思ったわけだ。


 道には思いもよらないところに、段があったりしません?


 おじいちゃんが歩いてたら、必ずこけるような感じの段。


 その段を踏むと、押してもいないのに、クラクションが『プァン』と鳴る。


 ちょっと砂利道を走ったら、小刻みに『ファ、ファ、ファ、ファ』て、落ち着けよっ!!


 2ヶ月乗ったけど、もういい。シートの下は開くんだけど、ヘルメット入らないし。


 これ、あのバイク屋に返そうと思った。


 店のおじいちゃん、どんな査定したのかしらないが、2万8千円で売れた。




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